“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百二通目『もうひとつ上の一生懸命』
◆“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百二通目『もうひとつ上の一生懸命』
「一生懸命」(いっしょうけんめい)という言葉は、もともとは「一所懸命」(いっしょけんめい) という言葉の誤用から生まれた言葉です。
武士が「一つの領地を命がけで守り、生計を営むこと」から「命がけで物事を行うこと」を「一所懸命」と言っていました。この「一所」いう言葉が「一生」と混同されて「一生懸命」という単語が定着し、常用されるようになったのです。
つまり、「一生懸命」とは、「ひとつのことに命を懸けて取り組むこと」という意味です。
さて、君が「芸能の活動」に「一生懸命」に取り組んでいることは知っています。今までやったことがない歌唱やダンスの稽古に取り組み、台本を読んでセリフを覚えたり、鏡の前で表情や写真の写り方の研究をしたり、歩く姿を録画してチェックしたり、翌日の演目順を記憶したり、MCの内容を考えたり・・・
とにかく寝る時間を削って、趣味の時間を減らして、移動の時間も自分のグループの音楽を聴いたり、ダンスの動画を観ながら振り付けを確認したり、自分の時間を切り出してSNS投稿や動画配信の時間を作り出していることを知っています。
なぜなら、そこまでやらないと「ステージの上での君」を「維持」できるはずがないからです。
君は「一生懸命」やっています。それは分かっているのです。
しかし、「芸能の世界」は残酷です。君の「一生懸命さ」は「数字」として、評価されてしまいます。
それはSNSのフォロワーの数だったり、動画配信時の視聴ユーザーの数だったり、公演を観に来てくれるお客さんの数だったり、自分のグッズの売上だったりです。
「一生懸命さ」は現実の世界では「数字」として「他人から確認されて」しまうのです。
それらの「数字」は「自分の目標値」を超えていますか? 満足できる「数字」ですか? 自分が所属するグループや事務所の経営を継続させるのに充分な「数字」ですか? そして、君自身の時間を切り出して得られる「数字」として満足がいくものですか?
もし、その「数字」が納得のいかない「数字」であった場合、原因はグループや事務所にあるかもしれません。グループのコンセプトが悪かったり、運営手法が稚拙だったり、楽曲に人気がなかったり、台本がよくなかったり、衣装が合ってなかったり、美術や演出が適切でなかったり、スタッフが無能だったりすることに原因があるのかもしれません。
きっと、そういう「環境」では「今の君が獲得している『数字』以上の数字」を過去にグループや所属メンバーは「 誰も獲得したことがないはず」です。
メンバーひとりにどれほどのファンがいたのか。メンバーひとりあたりの最高の売上はどれくらいなのか。過去最高の来場者数はどれほどなのか。一年間で何回、舞台に立ったことがあるのか。どんなコンテストでどういう成績を残しているのか・・・
疑いがあるのであれば、過去の記録を調べるべきです。そして「ああ、今の自分の『数字』以上の数字をこのグループは獲得したことがないのだな」と判明した時には、君が「数字」を獲得できないのは「環境のせい」であると考えて間違いないでしょう。
逆に、「記録に残る数字」に君の数字が届いていないのであれば、ひとつの疑いは晴れます。
君が「満足できる数字」を達成できないのは、「環境のせいではない」ということです。同じ「環境」や、楽曲、台本などの「ツール」で、先人たちが「数字」を獲得できていたのであれば、それは「君にも実現出来るはず」です。
では、なぜ、君は「数字」を得られないのでしょう。考えられる理由は3つです。
ひとつは「才能」。どんなに頑張っても「持って生まれた何かに足りないもの」があれば、「数字」を得ることは困難でしょう。
もうひとつは「時間」。特に「経験した時間」です。長く「芸能の活動」をしている人のほうが知識や経験は豊かです。君には「経験した時間」が足りていないのかもしれません。
最後が「努力と工夫」です。人に与えられた時間は誰でも等しく「24時間」です。
この時間をいかに有効に合理的にそして高い密度で使えるかで大きく差が出るのです。稽古は要領よく受けれているか、練習は適切にできているか、鍛錬は効果的か、無駄なく準備できているか、健康管理は十分か、休息は足りているか、心配ごとに悩まされていないか・・・
今の君は確かに「一生懸命」に「努力と工夫」をしているのでしょう。
でも、「数字」にその「結果」が表れていないとすれば、客観的に見て「一生懸命さ」が足りていないということになります。
たぶん、君が思っている「一生懸命」は、まだ「本当の一生懸命」ではないのだと思います。
決して、「頑張っていない」のでは、と言っているのではありません。でも、「本当に一生懸命やっている」なら、もっと満足のできる「数字」が得られていなければウソです。
「頑張っている」けど、どこかでちょっと「本当の一生懸命になれていない」のではないでしょうか。
どうせ自分の時間を削り出して「芸能の活動」をするのであれば、もっと多くの人に君のことを見てもらいましょう。そして、君の力で多くの人を笑顔にして、元気になってもらい、勇気を出してもらって、幸せになってもらいましょう。
君には、その力があります。それを実現できる「環境」や「ツール」を持っているのですから、そういうものを120%活用しましょう。
君には、そのチャンスが与えられているのです。それは誰でも手にできるものではありません。色々な運が重なって、君はそれを手にしていることを自覚するべきです。
君は幸運で幸せだと思います。誰でもが出来ることではありません。周囲を見回してください。私生活の中で「芸能」に関わっている人が何人いますか? そうなんです。選ばれた人しか「芸能の活動」は出来ないのです。もっと貪欲にガツガツとその「幸運の味」を求めるべきです。
たらたらとグズグスとやっている時間は、無駄です。もったいないです。まだまだ君は光って輝けるのですよ。自分を磨ける「場所」にいるのです。その「場所」にいることをもっと感じてください。
そのために君は今日、たった今から『もうひとつ上の一所懸命』にならなければなりません。昨日までの「一生懸命」を超えて、さらに「一生懸命」を目指さないといけません。
君には「芸能の活動」以外にもしなければならないことがあるかもしれません。それは仕方ありません。しかし、それらを言い訳にするのは間違いです。そういったものをやりながら「芸能の活動」をするから「一生懸命さ」が必要になるのではないでしょうか。
必ず、その「一生懸命」の先に、『君がこの世界に生まれてきた理由』が見つかります。
「ひとつのことに一生分の命を懸けて臨む」。
「芸能の活動をする」とは、そういうことです。
以上
「“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百一通目」は2023年12月20日の記事
「“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百三通目」は2024年1月3日の記事
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