温故知新の「超能力」

 故きを温(たず)ね新しきを知る。エンターテインメントの世界ではいつでも大切にされている言葉です。

 2023年も映画「シン・ウルトラマン」や「トップガン マーヴェリック」がヒットしました、10月からはテレビアニメシリーズとして36年ぶりに「うる星やつら」が復活しました。  

 先人が作り上げたコンテンツを今の時代に合うように作り直すことで、今のユーザーに楽しみを提供できるなんて、なかなか良いと思います。


 2022年10月16日 (日)の定期公演「スペーズワンマンショー 98 アイルビー編」 @ ROXX栄 (名古屋・栄)で上演したコント芝居「超能力」はリバイバルです。

 お客さんの中には「新作だと思った」方もいらっしゃいました。久しぶりにセットリストに組み込んだ昔の作品です。

 当時とは配役がまったく違うので、以前にご覧になったお客さんにも新鮮だったのではないでしょうか。



 「超能力 (2022)」は、学校を休んで超能力を習得していたというタカシと登校を勧めるアキオの2人の場面から始まります。タカシはサイコキネシスでアキオに干渉します。アキオは、腹部を押さえて、ぎこちなく後ずさりします。タカシは自分が超能力を使えることを確信した様子です。

 このシーン。「アキオはタカシに調子を合わせている」というシーンです。本当にタカシが超能力を使えるわけではないことを観客にはわかってもらわなければなりません。

 アキオ役の鈴川 彰のわざとらしさ芝居が上手く出来、高月 圭演じるタカシの本当に超能力が使えると大喜びする様が見事にはまり、客席からは笑いがおこりました。



 学校一の不良・権田が登場し、空気は変わります。桐山 涼が作り上げた権田像は、当初の台本の権田とは少しだけ様子が違うキャラクターでした。稽古で試行錯誤の末に完成した権田はどこかに余裕のある不良になりました。

 権田には超能力は通用しません。アキオのように調子を合わせる必要もありません。当たり前のことです。

 しかし、タカシが飛ばすテレパシーをひょいひょいと避けてみせる芝居があります。台本にはない演出です。これは、稽古中に生まれた動作です。ちょっと笑えるシーンになりました。


 桐山 涼、鈴川 彰、高月 圭の演技力が高まったことで、以前の「超能力」とは比べ物にならないほどの情報量が詰まった芝居になりました。

 本編中にはありませんが、ステージの芝居の「始まる前にタカシとアキオは何をしていたか」とか「権田に連れ去られたタカシはどうなるのか」についてもメンバーたちとは話し合いをしました。

 ステージでお客さんに披露するのは登場人物たちの人生のほんの一瞬でしかありません。でも、その一瞬の前にも後にも登場人物たちの人生は「存在」しています。

 その「存在」込みで演技を出来るようになった3人に温故知新で得られたモノを感じざるを得ないのです。


 今後もスペーズは旧作を掘り起こしていきます。卒業していった先輩メンバーたちが残していったものを継承し、観察し、再演していくことで、「新しいモノ」を獲得できるはずだからです。

                                                 以上


男装パフォーマンスユニットSPADES

名古屋・栄を拠点に活動する「男装」のパフォーマンスユニット。 歌・ダンス、芝居、お笑いと幅の広いジャンルで活動しています。 キャッチコピーは「あなたの夢を叶えます」。