“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 十通目『目的と立場のバランス』

◆“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 十通目『目的と立場のバランス』 


 ある目的を達成するために「正しいことだ」と思ってやったことが、「時」と「場合」によっては、自分自身にとっては、なんの得にもならないことがあります。今日はそういう話をします。


 君がグループ内で新人であると仮定します。まだ、歌もダンスも数曲しか習得していない新人です。ある時、振り写し (振り付けを先生から教授してもらうこと) のレッスン中に先輩メンバーが間違って振り付けを覚えていることに気が付きます。


 この時、君はどうしますか?


① その場で先輩に対して間違っている箇所の指摘をする

②  その場で先生に対して、先輩が間違っていることを伝える

③ その場では何もしない


 さて、どれでしょう。


 同時にこの時の君は心の中でどう考えているのでしょう。


④ 先輩の間違いを指摘して、自分の優秀さをアピールしたいという優越感

⑤ 間違いの修正に役立てれば、グループのためになるだろうという厚意

⑥ 特に何も目的はないが、ただ気がついたから言ってみただけ


さて、どうでしょうか。

 

では、答えです。


①「先輩への指摘」。これはやってはいけません。先生から求められた場合は別ですが、自らいきなり意見を言ってはいけません。みんなの前で新人から指摘を受けた先輩の立場はどうなるのでしょう。その時の先輩の気持ちを考えてみてください。自分が逆の立場だったらどうでしょうか。新人に対してどういう感情が芽生えるでしょうか。


②「先生への伝達」。これもやってはいけません。おこがましい行為です。君は先生ですか ? まだ、数曲しか覚えていない君が、いったいどういう立場で先生の仕事を奪うのですか? 先生の面目をつぶして、どういうつもりなのでしょうか。自分が先生の立場だったら、この生徒のことをどのように思うでしょうね。


③理想としては「その場では何もせず」に、あとからそっと「先輩、先輩、あの部分を教えて下さい」と言って教えてもらい、その時に気がついたフリをして、「あれ、こういうふうでしたっけ?」と先輩自身に気づかせるくらいの思いやりがあるといいですよね。もしくは、運営さんやプロデューサーさんにこっそり相談するのがいいでしょう。


④「優越感」。その場で自分が優位に立ちたいからと思っていたりしないでしょうか。これは危険です。他人の間違いを指摘して、その人に恥をかかせても、君は優位な立場には立てません。むしろ逆の結果になりますよ。


⑤「間違いの修正に役立つ」ことが、グループのためだと思っていても、君の「立場」が、どうなのかという問題があります。たとえそれが「厚意」であったとしても、「手段」を間違うと君は「敵」を増やすばかりになります。本当にグループのためになりたいと思うなら、先輩の間違い探しをするよりも、自分のスキルを上げることに集中しましょう。そのほうがよほど「グループのため」になります。


⑥「気がついたから言ってみただけ」の場合は最悪です。もっと「自分の立場」「他人に対する思いやり」「その場の空気を読む力」を意識しましょう。そうしないと君はいつかグループ内で「孤立無援」になりますよ。



 大事なのは「何のためにそれをするのか」を冷静に考えることと、「それをする適切な立場にあるのは誰か」を推測する能力です。「目的」と「立場」のバランスを崩すと、誰のためにもならないどころか、自分自身が傷つくことにもなりかねません。注意してください。

                                                 以上


 「“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 九通目」は2022年3月29日の記事 

 「“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 十一通目」は2022年4月13日の記事

男装パフォーマンスユニットSPADES

名古屋・栄を拠点に活動する「男装」のパフォーマンスユニット。 歌・ダンス、芝居、お笑いと幅の広いジャンルで活動しています。 キャッチコピーは「あなたの夢を叶えます」。