「ダイナゴヤ」の実は・・・②
演歌とダンサブルな歌謡曲の中間点にあるジャンルが「ムード歌謡」だと思ってください。昭和にいくつものヒット曲を出したこのジャンルは、今ではまったく流行らなく、古臭い印象しかありません。しかし、逆に「懐かしいけど新鮮」であることも事実です。
「ムード歌謡」は、曲のテーマのほとんどが男女の恋愛です。しかも「悲しい恋」だったり「忍ぶ恋」だったり「恋のはじまり」を描くものが多いのも特徴です。「道ならぬ恋」を題材にすることも珍しくはありません。
歌詞の中では時間帯の大体が「夜」で、東京や地方の「街」が舞台だったりします。「ご当地ソング」として親しまれている曲も枚挙にいとまがありません。あと、「お酒」や「酒場・バー」もしばしば登場します。
令和の時代に「ムード歌謡」を復活させたらどんな曲がいいのか。楽曲「ダイナゴヤ」の企画は、ここからスタートしました。
若い男装メンバーが歌うわけですから、湿っぽい悲恋は避けました。進行中だけど、じれったい、でも希望がある恋物語になりました。今のスペーズには「お酒」のイメージがありませんから「居酒屋」も「バー」も出てきません。
スペーズは愛知県名古屋市を拠点に活動しているので「ご当地ソング」っぽい要素は生かすことにしました。ただし、「余所がやってることはやらない」のがスペーズの矜持ですから、「ご当地ソング」にあるまじきことをやっています。
「ダイナゴヤ」、実は曲中に具体的な場所名が出てきません。「大名古屋」とサビで歌っているわりには、地名やランドマークの名称を明確には歌っていません。
例えば、どこの「タワーの飾り灯」なのか、どの商店街の「静かなアーケード」なのか、「地下街」とはどこのことなのかが具体的ではありません。
「ブリッジの朝日」にいたっては、大きな橋のことなのか古くからある町中の橋のことなのか、ひょっとしたら中心街にある “ブリッジ” の名を持つ陸橋なのかもしれないのです。
唯一、「つがいの 金鯱(キンシャチ)」のみが「名古屋城」のことなんだろうなと読み取れるだけでしょうか。
地名やランドマークの名称をはっきり歌っていない理由があります。
歌を聞いた時、人は自分の経験や思い出と歌の内容を重ね合わせることがあります。しかし、歌詞で「どこどこ」と限定して歌われてしまうと「自分の思い出の場所とは違う」となってしまうことがあり得ます。
歌は聞いた人の想像力によっては「その人の物語」になりえます。「ご当地ソング」っぽいムード歌謡曲「ダイナゴヤ」が、あなたの物語と重なることを祈っています。
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