“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百九十二通目『卵の中で朽ちていくことになる』

◆“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百九十二通目『卵の中で朽ちていくことになる』

　「このままだと君は、殻を破れず卵の中で朽ちていくことになるよ」

　今、そう言われて「それはイヤだ」と思った君は、見込みがあります。

　そしてそれは、君が「自分の殻を破れていない」ということを自覚しているという証左ともいえます。

　君が今、芸能の世界にいることは、それだけでひとつの才能です。普通の人はそんな勇気はありませんから。

　日々、鍛錬しているなら、それもまた才能です。普通の人は歌やダンス、芝居の練習なんてしなくていいのですから。

　「何かいいことあるんじゃないか」と思って、芸能の世界に居続けられるのも才能です。だって何の保証も根拠もない世界ですから。

　君にはなんらかの才能があります。それは間違いありません。

　ただ、このままでは、それがどんな才能に育っていくのかはわかりませんし、世の中に出していかなければ、誰の目にも触れずに終わってしまいます。

　せっかく「何か」を持っているのに、そのまま人生を終わらせてもいいのでしょうか?

　よく考えてくださいね。

　確かに君にはまだまだ50年か60年、いや、ひょっとしたら70年か80年の時間があるかもしれません。しかし、「若くて輝いていて、失敗してもまだ挽回できる時間」は、実はそんなに残されていないのです。

　今後、生活や環境の変化も訪れるでしょう。自分の家庭を作り、家族と過ごす時間も増えてくるかもしれません。

　だから、もっと自分の可能性に夢を見て欲しいです。

　そのために、もっと貪欲に色々なものを取り込んで欲しいです。

　毎日を「もっと、もっと、このままじゃ足りない。届かない。手に入れられない」という思いで満たして欲しいのです。

　そうしないと殻を破ることはできないでしょう。

　殻を破れずにこのまま日々を過ごせば、何年後かに「ああ、あの時、素直に愚直に『もっと、もっと』と思っておけばよかった」と後悔する日を迎えることは間違いないのです。

　「このままだと君は、殻を破れず卵の中で朽ちていくことになるよ」という言葉を、いつの日にか君が「本当にそのとおりだったなぁ」と後悔することがないように祈っています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上

「“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百九十一通目」は2025年9月17日の記事

「“アイドル”や“何者か”を目指す君への手紙 百九十三通目」は2025年10月1日の記事