耳なし芳一と男装の俳優
「この怪談、やっと体感。」2021年9月3日(金)~5日(日)に名古屋で上演された「怪談音楽劇 踊るBACH芳一」(脚本・演出 ROCKMAN) のキャッチコピーです。
この舞台は、当初、2020年5月に上演の予定でした。コロナ禍に見舞われ、予定は延期。1年4カ月経っての上演となりました。上演をあきらめることなく、無事に千秋楽を迎えた岩男組代表 岩男考哲さんと関係者と出演者の皆さん。おめでとうございます。そして本当にお疲れ様です。
小泉八雲原作の短編「耳なし芳一のはなし」を大胆に構成しました。全編をバッハのクラシック音楽と和太鼓のリズムが混然一体となって彩り、動的な場面では役者たちの舞踊が時間と空間を自在に支配します。まさに「体感」する舞台です。
盲目の法師・芳一と平家の亡霊・伊勢姫の悲恋の結末はショッキングでありながらも美しいシーンとして描かれます。見事な演出です。
スペーズからは高月 圭が亡霊の大将である知盛 (とももり) 役として出演しました。長い棒を得物 (武器) として振り回す様は、勇猛な平家の武士として十分に存在感を示しました。また、スラリとした佇まいには一族の長・平清盛の息子としての気高さを感じることができました。
演劇では若い男性役を女性の俳優が演じることは、珍しくありません。しかし、史実では平知盛が壇ノ浦の戦いで命を絶ったのは33歳の時と言われています。若いとはいえない役ですが、男装パフォーマーの配役に違和感を覚えた観客は少なかったと思います。劇中に登場する平家の面々が「この世のものではない」という設定だったからでしょう。
「怪談音楽劇 踊るBACH芳一」では、男装の俳優のひとつの価値を発見することができました。女性ではなく男性ともいえない。そういう役どころが求められた時、男装パフォーマーとしての持ち味が発揮できます。スペーズの可能性が広がったのを感じます。
キャスティングしてくださった岩男組さんには大変感謝しております。本当にありがとうございます。
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